I LOVE YOU









「笠松センパイ」

朝練が終わり、ロッカー室で黄瀬は笠松に声をかけ、少し大きめの包みを渡した。

笠松はその包みを受け取りながら、何だ?と聞き返す。

「プレゼントっスよ。今日センパイの誕生日じゃないスか」

そう黄瀬にいわれて、笠松は自分の誕生日ということを思い出した。

「ありがとう、黄瀬」

黄瀬は開けてみてくださいっスよ。と付け加えた。

包装紙を開き、箱を開けるとタオルが入っていた。

白い生地のタオルを広げると、中央に【YOU】の文字と両端に模様がついている。

「これ、俺とお揃いなんスよ。これをつなげると・・・」

黄瀬は肩にかけていたタオルを広げる。

広げたタオルには【I】の文字がついている。

背後から森山が声を張り上げた。

「それ、ペアタオルだろ、片思いの子にあげると恋が実るというウワサのタオルじゃん。

結構、品薄状態って聞いたけど、お前よく買えたなぁ〜」

森山は興奮ぎみに話した。

「たまたま入った店に売ってたんスよ」

黄瀬は森山にそう返した。

「でも、何で笠松に?」

その質問に黄瀬はニッと笑顔を浮かべた。

「俺、センパイのこと好きっスから・・・」

「お前の笠松好きは半端ないからなぁ〜」

森山はそんな黄瀬の言葉に一切疑問に思わず、さらりと返した。

もともと普段から笠松は後輩の黄瀬の面倒を見、黄瀬は慕っているのもあって、

まわりには主人を大好きすぎる犬というイメージがあるようだ。

そういうのもあり、黄瀬が笠松を好きだといっても違和感がまったくないのだった。


その日の部活は久しぶりの休みで笠松と黄瀬は遊園地に行った。

マイナーな遊園地で乗り物もいくつかしかないが、何故かそれなりに込んでいた。

「今度は休みの時に行きたいっスね」

「そうだな」

そういいながら、高校生2人はアトラクションを乗る。

ジェットコースターで叫び、回転する乗り物で悲鳴を上げ(笑)

お化け屋敷で暗いことを理由に黄瀬の手を握りながら歩いた。

時々、黄瀬が怖がって抱きついてきた。


「スミマセン、俺お化けとかちょっと苦手で・・・」

「まぁ、俺はお前のレアな一面を見れて面白かったけどな」

笠松は冗談をいって、黄瀬はブーとふてくされたが、2人は楽しそうに笑った。

「黄瀬、今度はアレだ」

笠松は指を指した先には観覧車があった。

それなりに大きい観覧車で、一周15分位だという。

観覧車に乗り込んで、向かい合わせに座る。

「センパイ、改めて誕生日おめでとうっス。これからもずっと一緒にいてくれるっスか?」

「あたりまえだ。俺の方こそお願いしたいくらいだ」

黄瀬は立ち上がって、笠松の横に座りなおす。

「センパイ、好きっス」

そうつぶやくと、黄瀬は笠松にキスをした。

始めは軽く、二度目は長く・・・。

「ちょっ・・・待て・・・黄瀬・・・」

三度目のキスをしようとした黄瀬を笠松は制した。

「今いいところじゃないスか〜」

「いや、嬉しいんだけど・・・これ以上やると俺の身体がもたねぇ」

笠松は苦笑いをこぼした。

「そうスね・・・俺もヤバイかも・・・」

2人は互いの下半身を見つめるとクスッと笑った。

数分後、観覧車が地上に降りると、2人はそのまま遊園地を後にした。

空は夕暮れが広がっていた。

「センパイ、今日は楽しかったス」

「俺も楽しかった、今日はありがとう。黄瀬」

黄瀬はそのまま立ち去ろうとした。が、黄瀬の腕を笠松は掴んだ。

「・・・これからウチに泊まりに来ないか、黄瀬?」

「え?」

うれしい誘いだった。黄瀬もこのまま帰りたくなかったから。

「でも、迷惑じゃ・・・?」

「一緒にいたい。このまま帰したくないんだ」

笠松は黄瀬を強く抱きしめるとそうつぶやいた。

黄瀬は笠松の腕の中で二つ返事でOKした。



2人はそのまま笠松の家にむかった。

ささやかな笠松の誕生日を祝い、ケーキも食べて、黄瀬は楽しかった。

もしかすると笠松以上によろこんでいたのかもしれない。

「黄瀬」

ベッドに腰掛けている黄瀬に笠松は抱きしめた。

「センパイ?」

「お前を好き過ぎて・・・どうにもならねぇ・・・」

おかしくなりそうだ。

笠松は黄瀬をそのままベッドに押し倒した。

「センパイ・・・俺も同じっスよ。今日はセンパイの・・・好きにしていいスよ」

黄瀬は笠松を見つめながら、笑みをこぼした。

「黄瀬・・・優しくは出来ないぞ・・・」

「わかってるス」

2人はそのまま口付けを交わし、身体を重ねた。



部屋の中には黄瀬からもらった誕生日プレゼントのタオルが並んで置いてあった。

黄瀬のタオルに【I】

笠松のタオルに【YOU】

つながった部分がハートのマークができるようになっている。

【I LOVE YOU】

の文字が出来上がるのだった。




おわり